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無題


メモ④















やってしまった。
俺は今一番やってはいけないミスをした。




「買い物袋が一つ足りねぇっ!!」



買い物袋…それが食材が入ったような袋なら気にしない。
しかし今回落とした無くした袋の中には、たった今買ってきた福袋の中身が入っている。
いつも買っている福袋の中身は、かわいいぬいぐるみが詰まっているのだ。



「やべぇ…どこで落としたんだ?」



キョロキョロと周りを見るが、この近くで落としたわけでは無いようだ。
新年早々物を無くすだなんてツイてない…



「あー荷物も多いしなぁ…一度帰ってから戻って探すか」


無くした袋と同じように、ぬいぐるみやキーホルダーなどの入った袋を両手いっぱいに持っている男――長宗我部 弥三郎はガタイのいい男だ。
そんな男が女の子の喜ぶような可愛いものが大好きだなんて、大学の友人に知られるわけにはいかない。
そういうところには男のプライドってものがある。


「誰かに拾われてたら諦めるか」


拾った相手が女の子だったら、喜ぶかもしれない。
なんせ自分が落とした福袋の店は、最近できたばかりだが雑誌やテレビに取り上げられるほど人気の店のものなのだ。
予約が始まってすぐに売り切れたことをテレビで見た大学の女子も悔しがっていた。




「あ、あのっ」
「あぁ?」



家へと荷物を置きに行くため、駅に向かおうとすると後ろから声をかけられる。低い声からすると男だろう。
どうせなら可愛い女の子がよかった、と思いながら振り返る。そこにはパッと見は女の子に見える人物が紙袋をこちらに渡してきていた。
その袋は自分が先ほど探していた福袋だ。



「ここここ、これ!落としました!!」
「え、と…ありがとう…どこで、拾ったんだ?」



何故か俯きながら震える彼(多分男だから彼)にお礼を言い、袋を受け取る。
そこで疑問だったことを尋ねた。彼が袋を拾ったのは随分と前のことだろう。
ついさっき気付いた自分が近くを探しても見当たらなかったのだから、彼は落とした袋を持って俺を探していたに違いない。



「す、すいませんっ!中身がぬいぐるみだったんで彼女にあげるんだとっあ、あれ?えっと」
「落ち着けよ、別に俺怒ってねぇし…ってか、助かったし」
「すいません…あまり人と喋り慣れてなくて、俺…」



いつまでも顔を上げない彼の頭を軽く叩くと、ビクリと怖がられる。
髪が長いせいか喋らないと女性に見える男が一歩引いてやっとこちらを見る。



「…あ、右目」
「っ!」


ぼそっと呟いた言葉が聞こえた彼は、また俯いてしまう。
気にしているのかもしれない…悪いことをしたな。



「悪ぃ、気にしてる…よな」
「い、いや!大丈夫!!ってか俺、そろそろ行く、から」



急に敬語が外れた男は、ペコペコと頭を下げると走って今来た道を戻っていく。
唖然としながら彼の走っていった方向を見ていた弥三郎は、名乗らずに消えた男をどこかで見かけた気がするな、と記憶の中を探し始めた。
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